高校生のみなさんは学校生活のどこかで、
芥川龍之介の作品に触れたことがあるのではないでしょうか?

彼の作品では「走れメロス」や「羅生門」が有名ですが、
じつは隠れた名作がたくさんあります。
その中でもじっくり丁寧に読んで欲しい作品「地獄変」は
まさに夏休みの読書感想文にはうってつけです!
今回は「地獄変」のあらすじと
見どころのポイントを紹介していきたいと思います(^O^)
あらすじ
物語の舞台は平安時代。
主人公は当代随一の絵師です。
彼はとんでもない画力を持っていますが、
身も心もけちでいやしいので、
いろんな人から嫌われています。
しかし彼には美しく、
思いやり深かくて気立てのいい娘がおり、
そんな娘を彼は溺愛していました。
その娘は屋敷で侍女として大殿につかえており、
大殿はその娘をことのほか気に入っていました。
ですが娘はそんな大殿の気持ちには
答えることはありませんでした。
絵師も、
可愛い娘にちょっかいをかける大殿のことが気に入らず、
ことあるごとに娘を自分のもとへ帰そうとしていました。
物語の悲劇の始まりは、
絵師が大殿から「地獄変」という
地獄で責め苦を受けている死者たちの絵を描いて欲しい
という依頼から始まります。
大殿からの依頼を着々と進める絵師ですが、
どうしても絵のある部分が描けなくて悩んでしまいます。
その部分とは
「牛舎の中で火に巻かれ、悶え苦しむ女性の姿」
というものでした。
絵を書くためには手段を選ばない絵師は、
大殿に
「実際に牛車の中に豪華な衣装をまとった女性をいれて
焼き殺す様を見せてくれ」とお願いします。
大殿は絵師の願いを聞き入れます―
しかしその牛車の中にいたのは絵師の娘だったのです。
火をかけられ、苦しみながら死んでいく娘を、
最初はこの世のものとは思えないほど
苦しげな顔で見ていた絵師ですが、
だんだんと娘が死に行く様を恍惚な表情を浮かべて
じっと眺めていました。
それに対して大殿は、
最初は舌なめずりをせんばかりの表情を浮かべていましたが、
娘が苦しむにつれて
どんどん真っ青な顔色になっていったのでした。
娘が目の前で焼き殺されるという酷い光景を見た賜物か、
「地獄変」は至高の芸術作品となりました。
その絵を見た大殿の屋敷のものたちは
もう誰も絵師のことを悪く言いません。
名声を手に入れた絵師ですが、
数日後、自ら命を絶ったのでした。
見どころ
[adsense]ひとつ目の見所は、
芸術に対する鬼気迫る絵師の様子、です。
絵師は自分の見たまましか絵が描けないといい、
実際に弟子を鎖で縛って蛇をけしかけたり、
弟子をふくろうに襲わせたりしています。
最愛の娘を焼き殺させたという行為は、
その最たるものといえるでしょう。
ふたつ目の見所ポイントは、
語り手から見た登場人物たちと、
第三者(読者)から見た人物の印象のズレ、です。
この作品の語り手は、大殿の下男です。
語り手は大殿のことを「立派な人物」と語っていますが、
実際に物語を読んだあなたの印象はどうでしょう?
自分のことを振り向かなかった女性を焼き殺す冷酷非道な人物?
それとも芸術のために自分の好きな女性を殺した芸術至上主義?
人によって見方はそれぞれと変わるようですが、
この作品で面白いところは、
立場が変われば視点が変わるということが、
よく分かるところだと思います。
地獄篇の名言は?
名言(?)と言えるかはすこし微妙ですが、
作品を読み解く上でのキーワードとなる
登場人物のセリフをご紹介します。
「なに、己に来いと云ふのだな。――どこへ――どこへ来いと? 奈落へ来い。炎熱地獄へ来い。――誰だ。さう云ふ貴様は。――貴様は誰だ――誰だと思つたら」
「誰だと思つたら――うん、貴様だな。己も貴様だらうと思つてゐた。なに、迎へに来たと? だから来い。奈落へ来い。奈落には――奈落には己の娘が待つてゐる。」
「待つてゐるから、この車へ乗つて来い――この車へ乗つて、奈落へ来い――」
この場面は絵師が地獄変の制作途中に
昼寝をしていた時に発した寝言を話した場面です。
絵師の地獄変をつくる意気込みと
鬼気迫る様子がよく現れていますね。
地獄篇を見た感想
わたしがこの作品を読んで感じたことは、
作者の芸術への姿勢がこれほど現れた作品は少ない
というものでした。
「地獄変」を描き終えた絵師は、最後に自殺をしますが、
それについて作中の語り手は、
死んだ理由を「娘が死んだ失意のせい」といっています。
ですが鋭い読者は絵師が死んだ理由は
それが原因だとは思っていないと思います。
至高の絵を書いてしまった絵師は、
もうそれを超える絵を書く事ができない、
その絵が自分の限界だと悟ってしまった絵師は
自ら命を絶ってしまった、と解釈することもできます。
その姿はまるで
「ぼんやりとした不安」
を抱えてしまい、自殺した芥川龍之介の姿と
重ね合わせることができるような気がしてなりません(>_<)
芥川龍之介の作品でおすすめは?
「河童」
芥川最晩年の諸作は死を覚悟し、予感しつつ書かれた病的な精神の風景画であり、芸術的完成への欲求と人を戦慄させる鬼気が漲っている。出産、恋愛、芸術、宗教など、自らの最も痛切な問題を珍しく饒舌に語る
地獄変と同じく、作者のものごとへの考えがよくわかる一冊。
すこしむずかしいですが、
こちらも読書感想文をかくのにうってつけ本ですよ(^O^)
まとめ
いかがでしたか?
今回は芥川龍之介の代表作品「地獄篇」のご紹介をしました!
この記事があなたの読書感想文のヒントになればうれしく思います。
ヽ(´▽`)/